宗教改革の起爆剤となった諧謔の書 ― 『痴愚神礼賛』著:エラスムス 訳:沓掛良彦
エラスムス。 確かにマイナー。訳者があとがきで嘆く通りです。世界史ではルターの宗教改革のくだり、そしてトマス・モア(『ユートピア』の著者)の友人というくだりで出てくる位ではないでしょうか。しかし一度読めば、本作が豊かなヘレニズム的教養の詰まった、それでいてユーモアに満ち溢れる作品であることがわかります。 中世きっての知識人エラスムスによる本作、一言で表現すれば、当時の世間と宗教界を批判する諧謔の書、であると思います。痴愚(アホ)の女神という架空の神を作り、彼女が自分がいかに偉大であるかを自画自賛・礼賛するというもの。 彼女が居るおかげで世界は楽しく回る。その彼女が従えるのが「ウヌボレ」「追従」…